デジタルの進化とアナログの良さ(2)

Sabajapan2011-07-10


 「デジタル化の波」 というほど人財マネジメントの世界は押し寄せていないものの、やはり徐々にデジタル化は進んでいます。


 まずは、オペレーション的な業務。人事異動、労務管理、目標管理、報酬管理などなど。1000人を超える企業では、デジタル化されていないと事務作業が大変です。さすがに給与計算や社会保険業務は自社でデジタル化されていない場合、アウトソーシングしていると思いますが、一部の手作業処理が残っているだけでも「やっていられない仕事!」だと思います。また外資系企業のように、ライン長が人事プロセスを処理する場合は、セルフサービス機能がラインにもスタッフにも提供されていないと、とんでもないペーパーワークが発生しますね。


 一旦覚えてしまえば、デジタル化は便利。コピー機能やレポート機能を駆使すれば、生産性は10倍以上だと思います。逆に、使いこなせなければ、生産性を落とし、事務作業ばかりで一日を終え、大切な仕事が回らなくなります。


 戦略的な人財マネジメント分野でのデジタル化。これがどの程度役立つかについては、意見が分かれると思います。


 もちろん、ツールとして割り切れば、あるに越したことはありません。例えば、タレント・マネジメント。一般に「9ボックス」と呼ばれるタレント図も自動的に分類されると、非常に便利です。シミュレーションもできて、視覚化されるので、特に組織内における相対的な人財マネジメントには威力を発揮すると思われます。


 日ごろ、素晴らしいと思っていた人も、デジタル化してデータで判断すると、「なんだこの辺か」という現実に気づいたり、伏兵というか、意外と高いポテンシャルを持っている若者が登場したりします。意外性があるということは、データによって気づきがあったことの証明です。


 意外性がない部分は、9ボックスの1から3のあたり、つまりローパフォーマーのゾーン。このゾーンは、日ごろより問題があると感じる人が、しっかりそのゾーンに納まっています。他の人の意見を聞いても、ここはブレません。つまり、それだけマネジメントからのアテンションも高く、適切な判断が下されていた可能性が高いといえます。「ITは気づき」のツールというのが私の持論。管理対象が多ければ多いほど、マネジメントとしてのアテンションは分散します。その時、その拡散したアテンションに対して警告してくれる機能は、やはり助かります。気づかずに、有為の人財を見過ごしてはいけません。


 自分の判断を入れず、デジタル情報だけで判断すると、人財マネジメントはとんでもないことになりますし、マネジメントの重要な任務を放棄していることになります。しかし、公平性と生産性の観点では、デジタル化の進展は望ましい方向です。


 タレント・マネジメントだけではなく、人件費のシミュレーションやコンピテンシー管理と連動した人財開発、業績管理と人財配置シミュレーションなど、デジタル化が効果を発揮する人財マネジメント領域は広がっています。デジタル・デバイドによって、取り残されないようにしましょう。