ラスベガスのノン・プロフェッショナル(1)

Sabajapan2007-01-30

 カジノのプロフェッショナルを紹介したところ、好評をいただいた。社外からのアクセスはほとんど無い状態と思っていたが、意外と見てくださっている。カジノが好きな人も少なくないこともわかり、安心した。別のカジノコラムを立ち上げた方がいいかもしれない。皆さん、自制心を持って楽しみましょう。
 ハウスエッジ、つまり店のショバ代(取り分)はギャンブルの中では非常に低く、特にゲームによっては客側が有利なものすらある。私はこのハウスエッジの低いものしか手を出さない、2時間ぐらい腰を落ち着けて冷静に楽しめば、チャンスも巡ってきて、統計論ではハウスエッジに近づくのでそんなに負けないはずである。(論理的には必ず負けるのでご注意。)

 今回紹介するのは、前回と正反対、プロ失格のディーラーとマネージャである。
 ゲームはやはりルーレット。多くの人が自分の好きな数字に賭けると思うが、私も予測できない状態の時は好きな数字に賭ける。いわゆるラッキーナンバーである。事件のあったときは17番とそのストリートベット(16、17、18の3つの数字をカバーする3目賭け。写真のCの場所。)に賭けていた。17番には的中しなかったが、16に球は落ちた。オッズは12倍、確か2枚か3枚賭けていたと思う。好きな数字ばかりに落としてくれるほど神様は優しくないので、近辺のストリートベットやコーナーベット(4目賭け)を行うとリスクヘッジになる。的中したにもかかわらず、ディーラーが私の賭けていたチップを回収してしまったのがトラブルの始まり。大量のチップが台の上にあって、多くの客が入り乱れるとディーラーもなかなか大変、とても忙しい。抱えるように、ハズレチップと共に私のストリートベットを回収してしまったのだ。(所詮人間だから、こういった間違いは日常茶飯事。ボケッとしていて損をしている人は結構いると思う)
 賭けていたことをクレームすると、最初は無視。再度主張すると、「本当か?」と疑っている。

 外国人というと定義が広すぎるので、ここではアメリカ人とさせていただく。フランス人の交渉力と弁論能力はアメリカ人を凌駕すると思うが、アメリカ人も自己主張は強いのはご存知のとおり。空港等でトラブルになった場合、スタッフレベルでは融通が効かずマニュアルどおり処理されてしまう。時間もそんなにないので、諦めざるを得ない経験は何度かした。こちらも英語のハンディキャップもあるしトラブルになると、非常に手強い。
 親切な姿はあくまでも彼らの余裕がある場合であると考えた方がよい。彼らは弱者に対しては優しいのである。弱い者いじめをしない教育を受けているから、こちらの立場を気遣ってくれる(ここは日本の教育現場と大違い)。ただしこれはある意味で対等な立場ではなく、日本人がナメられている場合があるので一概には喜べない。曖昧な日本人スマイルではいけない場合がビジネスにおいてもある(「ノー」と言えない日本人というのはこういう状況から生み出された言葉だと思う)。自分達の利害が関係してくると、態度は変わってくる。猛スピードで、スラングを交えて主張してくると、こちらは非常に不利な立場におかれる。

 こういった場合、非常に重要なキーワードがあって、それは「フェア(fair:公平)」というキーワードである。「それはアンフェアかもしれない」と言うと多くの場合、顔色が変わる。言葉もストップする。フェアというスタンスは彼らのプライドであるから、聞き捨てならないということになる。
 そこで一旦チェンジペースというか、こちらの言葉を聴いてもらえる状態にして、論理的に主張する。英語もゆっくり喋ればよい。チェンジペースしないと、我々の3倍のスピードで主張されてしまうのだから勝てるわけが無い。上記の例のように英語が不得意な日本人ならではの喧嘩の仕方は、英会話教室では教えてくれない。異文化コミュニケーションにおいて悩んできた者の知恵である。
 
 ノン・プロフェッショナルのディーラーの話に戻る。そのディーラーは前回のポーカーフェースのBryanとは違い、非常に感情を露わにする女性である。大柄で、ラテンアメリカ系の人だった。
 しぶしぶ私の主張を認め配当を払うが、嫌がらせか、賭けた枚数は1枚で計算している。ストリートベットはオッズが低いので、1枚賭けることは絶対になく、最低でも2枚を自分の基準にしているため自信はある。

  • 「自分は最低でも2枚賭けるので、1枚はありえない。疑うのであればビデオを確認しろ。」(私)
  • 「何枚賭けたかもわからないのに、払えない」(ディーラー)
  • 「ダメ、ダメ」(ディーラー)

ディーラーは非常に不機嫌になって、こちらも気分が悪い。ピットクラーク(監視人)が2人のトラブルを見ている。頭の中は、どうやってチェンジペースにもっていくかで一杯だ。何枚賭けたかで争っていても埒があかない。出発点に戻るに限ると思った。

  • 「It was your fault fisrt, not my fault, wasn't it?」

「そもそもあなたの間違いでしょ」という言葉でディーラーは黙るしかなくなった。しかし真っ赤になって怒っている。次のゲームに進めようともしないので、進行はすっかり止まってしまった。さていよいよマネージャの登場である。
 この話には面白いオチがあるので、次回お楽しみに。英語での喧嘩は難しい。英語でジョークを言えれば、上達した証拠というが、英語で喧嘩ができればよりレベルが上だと思う。