機能する政治と行政

Sabajapan2011-02-27


 JR のぞみに乗って、大阪へ演奏に行きました。演奏は単なるジャムセッションでしたが、のぞみの車内誌に気になる記事が載っていました。


奈良県 生駒市 副市長を公募」


 「少子高齢化、経済の低迷、国の財政の悪化など、地方自治体を取り巻く環境は厳しさを増していくなかで、持続可能な自治体経営を続けるためには、様々な行政改革をさらに進める必要性があります。」と説明され、「勇気を持って挑戦を続けることのできるコーチ=副市長」副市長をコーチと位置づけています。


 他にも事例があったことが記憶の片隅にあったので、少し調べてみると、佐賀県が最高情報統括監(CIO)を公募したことや、富山県岐阜市もCIO補佐官を募集していました。


 今日の新聞に、菅政権の支持率が22%と発足以来最低であるとの記事が載っていました。既に国民の期待値は無いと思われるので、衝撃はないでしょうが、このまま日本という国はどこへ行ってしまうのだろうと不安を覚えます。派閥争いや次の選挙と地元の利権だけを考えている政治家は、既にプロフェッショナルではありません。政治のプロでない人達に政治を任せなければならない国民は不幸だと思います。


 私は、民主政治を補完するものとして、政治と行政のアウトソーシングを主張してきましたが、プロフェッショナルに任せるべきです。政治家を100%アウトソーシングしては民主主義ではなくなってしまうので、政治機能の一部でも良いと思うが、それこそ国民が信じたマニュフェストや財務指標、国際競争力等をKPIに、民間にアウトソーシングすべきです。派閥争い等は視野から外れていくような工夫も必要です。


 行政も、諸葛亮孔明がやったように、公務員を半減させても間違いなく日本の行政は機能します。あまりに無駄が多い。


 米国ジョージア州サンディスプリングス市のように、10万人都市でさえアウトソーシングを活用し、一人の市長、4人の職員、6人の議員で運営できています。もっともこれは、公務員を採用していく時間的余裕がなかったことからできあがった体制ではあるが。


 認定制度をつくり、利権が絡まないプロフェッショナルといえる政治家に政治そのものをアウトソーシングする、もしくは現在の政治家を、利権や私欲と切り離す工夫と共に再教育する。ここに書くように簡単ではないが、変革を実施しない限り、このままでは滅び行く国である。


 民間の叡智を活用し、必ずしも公務員でなくて良い仕事は、アウトソーシングを最大限活用していく。問題も発生しますが、生産性が向上し、客観性が高まり、財政にも寄与する可能性があります。

おまけと心理戦(2)

Sabajapan2011-01-04


 コンプを意識すると、どうしても掛け金つまりベットの単位が上がっていきます。30分に一回程度、カジノ側のマネージャがチェックしますが、チェックされているときは、多めに張りたくなります。つまり掛け金単位を多く評価してもらいたいからです。この評価はレーティングと呼ばれます。


 勝負が開始されたばかりの出だしでは、場の流れを読まなければなりません。しかしメモを持ったカジノ・マネージャは、レーティングのためにプレーヤーをしっかり観察しているのがよくわかります。観察されていると、レーティングを意識して、賭け方が少し飛ばし気味になります。基本的には場の流れを読むようなタイミングでは、小さく賭けて、流れを読んだ後に勝負どころで大きく賭けるのがセオリー。レーティングを意識すると、逆になり、流れがよくわかっていない時に大きく張り、勝負どころでは資金が少なくなっているパターンがよくあります。気をつけましょう。


 レーティングの単位ですが、カジノによってばらばらです。アメリカの場合、1回あたりの掛け金を20$、40$、100$、300$、1000$ぐらいの区分けで見ているようです。韓国のあるカジノは、100000ウォン以上でないとレーティングしないと言っていました。これも人間業なので、手間がかかるということです。


 我々の想像以上に、カジノ・マネージャはプレーヤーの賭け方をよく見ています。しかし時々、いい加減なカジノ・マネージャだったりすると、レーティングをよく忘れます。長時間頑張ったにもかかわらず、まったくレーティングされていない時もありました。また、難しいのは、ゲームをした後、直ぐにポイント・システムに反映されない点です。タイムラグがある理由は、人間がその結果をコンピュータに入力しなければならないことにあります。また、システムによっては、半日もしくは翌日でないと加算されないものもあります。出発ぎりぎりまでプレイした実績は、精算の時には反映されておらず、納得がいかないケースも少なくありません。


 これまで、カジノ・マネージャがプレイヤーの掛け金を評価するレーティングについて書いてきましたが、カジノ側がもっと確実にプレイヤーに賭けさせる方法があります。


 カジノ側が色々なルールを設定して、プレイヤーを優待するプログラムがありますが、その中で提供されるノンネゴチップというチップがあります。このノンネゴチップのノンネゴは、Non Negotiableの略。カジノ側は10000$を受け取り、プログラム提供時に10000$のノンネゴチップを渡します。このチップは通常のチップと違って、現金に換えることができません。もちろんテーブルでゲームをプレイすることはできます。ゲームにおいて、負けた場合は、そのままチップは回収されます。勝った場合は、張ったノンネゴチップはプレイヤーに戻り、勝った分は、普通のカジノチップで配当されます。つまり長時間プレイしていると、ノンネゴチップは負ける毎に回収され、普通の換金可能なチップに変わっていきます。犯罪で得た汚いお金を、流通可能な普通のお金に換えるマネーロンダリングのようですが、まさしくこのことをローリングと言います。


 カジノ側は、このノンネゴチップを渡すことによって、プレイヤーは確実に、10000$分のゲームを行うことになります。あまりゲームはしないが、テーブルに陣取って、飲み物ばかり楽しんでいるプレイヤーはノンネゴチップが消化できません。ノンネゴチップはカジノ側にとって、プレイヤーを賭けへと導き、ローリングさせて確実に儲ける方法なのです。ローリングすれば、確率論で確実にカジノ側が有利になります。


P.S.
 1.昔、麻雀仲間から届いた年賀状に、「絶対麻雀に負けない方法」というクイズが書いてありました。答えは、「麻雀をしないこと」でした。強制的なローリングは魔界への第一歩です。


 2.最近の雑誌、特に女性誌には、派手で大きなおまけが付いています。スポンサーからの提供がほとんどだと思いますが、ついついそれに釣られて購入してしまう人が多いようです。アウトレットのブランド品、「3つ買えば1つ無料」という罠に、今日はまりました。おまけの心理戦には気をつけましょう。 

おまけと心理戦(1)

Sabajapan2010-12-12


 久しぶりにカジノの話題をします。
 カジノにはコンプというシステムがあります。ご存知でしょうか?


 コンプとはプレイに応じて現金の払い戻し、もしくは飛行機のチケットや食事、ホテルの宿泊費、観光やショーのチケット等、カジノ側がゲストに提供するサービスを言います。


 どこのカジノでも、最近はプレイヤーズ・カードがあるので、ポイントが蓄積され、ポイントで景品がもらえたり、食事代金をそのポイントで払えるようになってきました。ジャンケットと呼ばれたりもする、カジノ側のホストが付く場合は、手厚く面倒を見てくれます。交通機関の手配から、空港へのお迎え。同伴者がいる場合には、ショッピングの手配や、観光の手配も行ってくれます。


 当然、こういったカジノ・ホストが着く場合は、それなりのお金を遣わなければなりません。勝ち負けは関係なく、ターンオーバーと言って、どれだけベットしたか、つまりどの程度賭けたかによってコンプの大きさが決まります。ホエールと呼ばれるとんでもない大金持ちは、コンプの額は関係ありません。カジノ側も、いかに気持ちよく過ごしてもらえるかということを気配りしておけば、自然とお金はカジノ側に落ちていきます。手厚い送迎を行い、スイートルームに花束とフルーツを用意しておき、カジノのVIPルームへ案内します。もちろん、すべて無料のサービスですが、ホエール達は、楽にそれらの費用をカバーしてしまう大金を落としていきます。時には大金を稼いでいきますが、その人達はまた必ず戻ってくるのです。したがって、勝っても負けても、「もうこんなカジノには二度と来ない」と思わせないことが重要です。


 銀行、カード会社、車のディーラー、高級レストラン、ホテル、百貨店の外商、エアラインなどなど、リピート・ビジネスが期待できる上客には手厚いサービスを施し、時には赤字となっても上客を大切にします。


 また、私のレベルでもそうですが、手厚いコンプともてなしを受けると、「負けたけど、色々遊べたし、旅行代もタダになったからまあいいか」と自分自身を納得させてしまいます。これは鋭い心理作戦だと思います。


 先ほど、ターンオーバーという言葉を使いましたが、コンプの大きさやポイントは、どれだけ賭けたかに依存しますので、一回あたりのゲームに大きな金額を張る人ほどポイントは大きくなります。また、そんなに大きな金額は賭けないながら、長時間プレイする人もポイントがそれなりに蓄積されます。一回あたりに大きな金額を張る場合は、当然リスクは高くなりますから、原資がそれなりにないとすぐにゲームオーバーです。ツキのない時は、負けも大きくなります。長時間プレイは、長時間プレイで、確率論が活きてきますから、全体としてはカジノ側が有利になってきます。カジノゲームは心理的なコントロールが重要ですが、コンプを期待してプレイしていると、微妙にプレイの仕方が変わってしまいます。コンプは心理戦に影響を与える伏兵と言っていいでしょう。


 カジノ側は、当然、プレイの進行をチェックしており、プレイヤーが思っているより正確に観察しています。また、最近では、プレイヤーズ・カードとプレイ実績が連動しており、ピットボスの判断だけで、食事券を出したりすることが減ってきました。カジノ側のチェックは、30分に一回程度行われ、昔ながらのやり方であれば、個人別にベット額をメモしています。


 チップ交換額や、開始と終了時の増減なども見ており、かなり「見える化」されていますのでご用心。長くなったので、次回に続きます。

中身の良さと露出

Sabajapan2010-10-26


 5000人入る会場は満員。ある国際カンファレンス、日本人がキーノート・スピーカーに登場しました。


 国際競争力は衰え、後ろを見ればマレーシアが日本に続き、世界は中国とインドばかりを見ている今日この頃。ネイティブの発音ではないし、帰国子女という感じではありませんが、英語でのプレゼンテーションは光っていました。このような場合、下手でも、とにかく自分の言葉で伝えることが大切です。


 ビデオも製作し、最初は日本の伝統的な美を描いたものでした。京都と思われる背景のなかで、琴の音色と風景が日本の侘び寂びを想わせます。木工細工を組み合わせた襖が紹介され、日本の微細技術をイメージさせます。その後、対照的に半導体などのハイテク技術が紹介されていきます。伝統的な日本の良さと、優れた先進技術をアピールする格好のビデオでした。


 プレゼンテーションの中身は、その企業がヒューマン・セントリックな未来を目指しており、ICTがもっと人々の生活に役立つことを狙っているという内容でした。数名のキーノート・スピーカー・プレゼンターの中で、アジア人はこの日本人だけでしたが、来年は日本人以外のアジア人が大きく増えるんだろうなと感じました。


 会場の5000人の反応は、感動を素直に表して大拍手。国際社会の中でプレゼンスが下がっている日本をアピールしてくれました。


P.S. リハーサルは何度も繰り返したそうです。日本でも自社の体育館を借り切り、大道具を200万円で製作して入念な準備をしたとのこと。社内公用語が英語になった会社にびっくりしていてはいけません。良いものを作っているだけでは、グローバル競争からどんどん取り残されていきます。言語に代表されるいくつものハンデキャップは、なんとか準備で乗り越え、その企業が持つ良さをどんどん伝えていかなければなりません。
 自ら伝えない限り、「相手があうんの呼吸でわかってくれる」ことはありません。

ラーメン店の小さな変化

Sabajapan2010-08-15


 経営統合は大きな変化ですが、小さな変化も「生き残り」を助けています。
 ある経済誌の記事に大変興味深いものがありました。


 有名なラーメン店、40年間、親子2代の伝統を守ったお店です。常連客は、「昔ながらの変わらぬしょうゆ味」を目当てに通い続けます。


 面白いのは、店主のコメントです。「同じ味でやっていたら潰れています。40年前と同じ味だったら、不味くてとても食べれません。」客の好みの味は、時代と共に変化するし、より良い味を求めて客が気づかないように味を変えているとのことです。


 「伝統」と「継承」。 「継承」の本当の意味は、「そのまま引き継がれる」だけではないような気がします。


 まず、一般的に思い浮かぶのは、伝統あるものをそのまま保存、引き継いでいくこと。もう一つは、伝統あるものを環境にあわせながら、アクティブな状態を維持していくこと。言葉の意味がよくわからなくなってきましたが、「継承」というのは、ただ単に同じ状態で保存しておくことではないということに気づきました。


P.S. 小さな変化は時間軸だけではありません。時代の流れがタテの流れだとすると、地域の流れはヨコの流れ。同じメーカーのカップ麺、地域によって味を変えています。タイヤのゴム質も、走る地域によって材質を変えているし、女性の下着も緻密に研究されています。


 私もラーメンは大好き、なかなか麺もスープも満足というお店はありませんが、今後、時代の変化を考えているラーメン屋さんも意識してみたいと思います。今日はたまたま、岡山でラーメンを食べてきました。岡山も、ラーメンの美味しいところだったのですね。

ゴルディアスの結び目

Sabajapan2010-08-08


 経営統合、「過去のしがらみ」を断ち切る良いチャンスです。


 買収される企業や組織、かつてはエクセレント・カンパニー、多くの場合一世を風靡した時代があったことでしょう。買収されたり、経営統合の対象になるということは、価値がある証拠です。コア・コンピタンスがあれば、戦略を変えたり、プロセスを修正することによってV字回復する可能性があります。


 何度も書いているように、どのようなエクセレント・カンパニーでも市場適応できなければ、朽ち果てていきます。エクセレントから普通の会社に、普通の会社からダメダメ会社に。「エクセレントなやり方を変えていないのに?」と言っても、周囲の環境が変わっていきます。


 従業員は馬鹿ではありません。市場の変化を読み取り、自分達も変わらなければならないと認識しています。しかし、なぜ変われないのか?


 それが「過去のしがらみ」です。歴史は人を育て、プロセスをつくり、人や企業の関係を構築していきます。できあがったものには価値がありますが、時代とともに、その関係性は複雑になっていきます。BというプロセスはAというプロセスを前提としているので、Aが存在しなければBというプロセスは成り立ちません。そのAというプロセスを熟知する人はCという人なので、Cという人は不可欠になってきます。CさんにとってAというプロセスを提供することは自分の価値なので、積極的には他人へ伝授しません。BというプロセスにはDやEという他のプロセスも関係していたとしたら、Bの変更は容易ではありません。


 企業の歴史というものは、上のようなしがらみの連続です。至るところに、「過去のしがらみ」が積み上げられ、これがゴルディアスの結び目になっているのです。フリジア王になったゴルディアスが、誰にも解けない複雑な結び目を作って牛車を縛りつけました。これがゴルディアスの結び目ですが、近くにいる村人達は、頑張っても解くことができません。また、どうしてこのような結び目ができたのか、歴史があるとそう簡単には解明できません。同じ文化の中で育ってくると、結び目の解き方がわからなくなってきます。


 経営統合のタイミングはこの「過去のしがらみ」を解く瞬間です。一刀両断に、過去のプロセスを断ち切ってしまうアレクサンドロス3世なのです。しがらみを感じていては、迷いや固定観念が入り、プロセスを断ち切れません。大変な痛みを伴いますが、ゴルディアスの結び目を解く唯一の方法かもしれません。


 時には一刀両断、新しい目で変革が必要です。

PMIと人財

Sabajapan2010-07-20


 経営統合、今回は「人」にスポットを当ててみたいと思います。


 PMI、聞いたことありますか?


 Post Merger Integrationの略で、買収後の経営統合の後、成功裏に統合効果を出していくことを目指すプロセスの総称です。


 そもそも企業文化の異なる会社や組織が統合するわけですから、そう簡単には成功しません。赤字企業を除き、買収時には株主価値に加えて、数10%のプレミアを付けることが一般的ですから、そのプレミア以上のシナジー効果が求められます。


 そもそもその前に、経営統合の目的を明確にすることが重要です。目的は下記のように色々あります。

  • 企業規模の拡大(売上、市場、店舗、R&D)
  • 顧客の獲得
  • 競合潰し
  • 人財の獲得
  • 新たなビジネスモデルの獲得、もしくは補完
  • 知的財産(IP)

 上記の中で、競合潰し、または特許など切り分けできる、明らかに企業所有の知的財産を除けば、「人」の役割はどの項目にも大きな影響を与えます。経営統合の成功と失敗は、人財のスムースな吸収が半分以上の鍵であると言っても過言ではありません。実際、企業買収を行ったものの、買収後に優秀な人財は誰もいなくなって、企業価値が大きく減少してしまうことは少なくありません。競合潰しの敵対的買収であれば、それも想定内かもしれませんが、支払う対価は想像以上に重荷となります。


 企業文化の差異を考えながら、人事制度の相違・格差を吸収させ、働く人のモチベーションを維持していく、なんと難しいプロセスでしょう。「企業は人なり」がまさしく露出することになります。置き換え可能な人達の集まりでは、この難しさはありませんが、ROAの高い企業は必ず「人財」を抱え、活かしています。
 買収側が、「人財を活かす」という発想を持っていること。これは大前提です。トップ・タレントを逃さない様々な仕掛けもあります。一方、重複部門や機能はリストラの対象にもなります。


 私の経験から言うと、マネジメントと従業員、両方のマインドがCSFとなります。どちらの場合も、本人達にとって変化ですから、この変化をいかに早く受け入れることができるかがポイントとなります。


 マネジメント、つまりリーダーは変化をドライブしていくこと、チェンジ・エージェントになることが求められます。自ら変化を創っていく気持ちが必要です。もちろん、変化させるだけではプロセスの破壊になるリスクが大きいので、既存のプロセスをどのようにスムースに移行、変化させていくか考えながらのチェンジ・エージェントにならなければなりません。


 一方、従業員は、この変化を楽しむ、受け入れるための工夫をするという気持ちでしょう。「しがらみ」があって、人はなかなか変われないもの、皆さんも実感しているのではないでしょうか。経営統合のような外圧がかかる良いタイミングに、自分と仕事を変化させるのです。既存の価値観とは異なるプロセスを受け入れることになるので、大変なストレスですが、変わらなければ化石化、カラパゴス化してしまうリスクが残ります。


 前向きに考えれば、新たな経験ができ、自分の新しいキャリアを転職せずに経験できる良い機会でもあるのです。


 とは言っても、変化は本当に大変です。。。。